2014/10/16

BRUTUS掲載情報と手縫い、ミシン縫いの違いについて

10月15日発売のブルータス、「木の椅子と木工」特集。
P,143 BRUT@STYLEコーナーにて Sartoria Ypsilon 代表の船橋を掲載して頂きました。
大変貴重な笑顔の船橋を見ることができますよ。

弊店が得意とする、イタリアらしい胸のボリューム感、柔らかさなど、すごく奇麗に撮っていただきました。関係者の皆様、本当にありがとうございます。
そしてブログをチェックしていただいている皆様!
是非とも、お買い求めいただきご覧いただければと思います。
※もちろんのこと「木の椅子と木工」の内容もとても興味深く面白いです。


BRUT@STYLEコーナーでは、P,140に天皇陛下のお洋服を縫われている事でも有名な「金洋服店」の服部晋先生も掲載されています。服部先生とは、以前NHK「美の壺」での背広の特集、以来の共演となります。

今日は、そんなブルータス掲載に絡め、服部先生が2004年に出版、執筆された「洋服の話」をご紹介したいと思います。


こちらの本は、テーラー業界の方だけでなく、洋服を仕立てたことのない方、洋服を全く知らない方など、玄人から素人まで誰にでも分かりやすく、大変面白い内容です。
私も、洋服の仕立てに興味を持ち始めた頃、当然のこと読ませて頂き、勉強させて頂きました。

そんな「洋服の話」
今日は、その中でもP,65~P,66に書かれている手縫いとミシンとの違いについての部分に触れてみたいと思います。

早速ですが、
「手縫い作業の最も勝れているところは、縫目に適当な弾力を持たせることが出来るということで、これは動きやすくするための大切な要素の一つなのです。」

この後に、服部先生はミシンでも手縫いと殆ど変らない縫い方が出来ると仰っています。

「手縫いの長所は、縫い目が多少動くこと、そして多少伸びる余地があることなのですから、そのようにミシンで縫えば良いわけです。それにはどうしたら良いか、といいますと、まずミシン目を粗く致します。当然粗い方が動きが出るわけですね。そして糸をゆっくりとかけるために、ミシンの速度をうんと遅くしてやるのです。皆さんは、ミシンというものは早く縫うためのものだ、と思っていらっしゃいませんか? たしかにそうなのですが、実はミシンにはとんでもない宿命があるのです。たしかに、早く縫うのがミシンの大事な仕事なのですが、困ったことに、早く縫えば縫うほど縫目が硬くなってしまうのです。このことが、手縫いが尊重される第一の要素なのです。ですから、出来るだけゆっくりと縫い、しかもミシンの糸の調子を出来るだけゆるくして縫えば、手縫いに近いミシン縫いが出来るのです。」
以上、服部晋の「洋服の話」より引用


大変勉強になります。そして、全く仰る通りだなと共感いたします。
さらにこれは私個人の考えではありますが、ミシン縫いのさらなるデメリットは、早く縫えば縫うほど「縫いずれ」( 縫い合わせる表生地と裏生地にずれが生じる事 )がおこるということです。
ですから、テーラー業界( 特にイタリア )では「古い足踏みミシン」で縫っているところが多いのだと思います。

では、弊店ではどうかといいますと...


brother社の「最新式の工業用ミシン」です、っと堂々宣言いたします(笑)
えええっーーっと思われた皆様、ご安心ください。
この、最新式の工業用ミシン「縫いずれ」がほとんどおこりません!
また、非常に縫いやすく、もちろんスピードの調節も可能で、早くも、遅くも、縫うことができます。

特にシャツを縫うのに、このミシンは欠かせません。
結局、私が何を申したいのかというと「古い足踏みミシン」だけが全てではないということです。
歴史は確かに大事です。ただ、時代は日々進化しているのもまた事実です。
ですから当然のごとく、機械も日々進化しています。

弊店は「手縫い」を第一とした物作りをしております。ですが「最新式の工業用ミシン」を使います。また、型紙は「CADシステム」を導入しています。
なぜならその方が、洋服を作る上で手よりも正確だからです。

いろいろな考え、ポリシー、こだわりはそれぞれ、どの業界でもあると思います。
もちろん「古い足踏みミシン」を否定する気は毛頭ございませんが、私達は、仕立て屋としてのパフォーマンスうんぬんより、実際の「物」と「質」にこだわった物作りをしていきたいと考えます。


2014/10/09

新設アトリエからのBuonoは弊社職人が縫い上げます

8月4日に新店舗を構え早くも2カ月が経ちました。
おかげさまで、沢山のお客様から御注文を頂いております。
本当にありがとうございます。

さて、本日は弊店のBuono、Distintoの違いについて、いま一度詳しくご説明させて頂きます。
そもそもBuono、Distintoとは、イタリアの「成績表の評価」に由来しています。
総手縫い(一切ミシンを使わない手縫いのみの服)はOttimo、「最も優れている」という意味です。
Ottimoに近づくほど、手縫いの工程が多くなり、よりソフトで高級な仕上りとなります。

今まで弊店が、お手頃な価格帯ということでお勧めしておりましたBuono。
簡単な流れとしては、

①採寸後、オリジナルの型紙作成
➁生地裁断
➂仮縫いの製作(芯据え)
④船橋本人によるフィッティング(仮縫い)
➄型紙補正後、生地断ちなおし
⑥★船橋が直接縫製指導を行った縫製工場で本縫い
⑦フラワーホール、ボタンホールを弊社職人が手縫いにて縫い上げ、仕上げプレス
⑧お客様へ納品

といった流れでした。

しかし、新店舗を構えてからのBuonoは、★上下共にLaboratorio(工房)にて弊社職人が縫い上げます。そのためご注文頂いたお洋服は、シャツ含め、すべてLaboratorio(工房)にて製作いたします。
縫製を外注にだすということはなくなり、新店舗Sala di Prova(フィッティングルーム)と、Laboratorio(工房)で全てが完結いたします。

そもそも洋服を仕立てる上で、最も重要なことは大きく分けると2つあります。
1つ目は、洋服をお客様の体に合わせる「フィッティング技術」です。
そして2つ目は、洋服を「仕立てる技術」です。

今までBuonoでは、2つ目にある「仕立てる技術」である縫製を、船橋が直接縫製指導を行った工場へ外注しておりました。しかし、外注では仕上りに限界があり、私達が表現したい手縫いの感覚、雰囲気が伝わる仕上りと着心地には達することができませんでした。

そこで今回、新店舗を構えるタイミングでBuonoの縫製を外注することを辞め、船橋含め4人の職人で縫い上げるという決断にいたりました。
勿論のこと、今までと比べ、Buonoであってもかなり手縫いの工程が入ります。
よって、弊店で最もお求めやすいCANONICO社の生地(1936年に創業したイタリア、ビエラ地方の高級服地)で税抜き価格、224,000円とお値段を勝手ながら上げさせていただきました。

しかし、仕上りは以前とは比べられないほどレベルが上がっています。
当然です。なぜなら私たちが縫い上げる訳ですから(笑)。
仕上りは見た目の雰囲気だけでなく、着心地も全く違い、特に肩まわりは以前のBuonoと比べ抜群な軽さを実現しています。どうぞお期待下さいませ。

少し専門的な話となりますが、Buonoでの手縫いの工程として。

・洋服を立体的に作る最も重要なアイロンワーク(くせとり)
・しっかりとゆとりを入れるイタリア式の芯据え
・立体的な作り方のバルカポケットとラウンドを意識した腰ポケット作り
・微妙な糸引きの感覚が仕上りに大きく影響するハンドステッチ
・肩に空間を作り前肩があたらないようにする肩ぐせ
・イタリア式の自然的な襟付け(ほんがけ)
・もちろんゴージラインも手で縫います。
・その他にも多々、手縫いの工程が入ります。




また、上着だけでなく、パンツの仕上りも大きく異なり、履き心地もやわらかく、今までとの違いを実感して頂けるはずです。例えば、裾の仕上りだけをとってもダブルのモーニングカットで前と後ろの傾斜を、2~2.5cmつけることができます。



勿論、弊店を代表するライン、Distintoはさらに手縫いの工程が多くなります。上着に関しては、ほとんどの箇所を手で縫い上げます。(おそらく肩バッドや裄綿まで一から作るテーラーさんは日本で他にはいらっしゃらないかと...)当然のことながら、新しいBuonoとの違いをDistintoでは実感して頂けるはずです。

以上、簡単ではございますが、Buono、Distintoの説明をさせて頂きました。
有難いことに、現在ご注文が立て込んでおり、忙しい日々が続いておりますが、スタッフ一同、日々精進してまいります。また、ブログもできるだけ更新できるよう頑張りたいと思います。

今後ともサルトリアイプシロンをどうぞ宜しくお願いいたします。