2015/04/25

GIACCA CAMICIA

我々サルトリアイプシロンが昨年夏からご提案しております”GIACCA CAMICIA”(ジャッカ・カミーチャ)
この単語がブログにもよく出てきておりますが、所謂普通のシャツジャケットとどう違うのかをこの場を借りてご説明させて頂きます。

「GIACCA CAMIIA」
これは、極力中身を省いたシャツのようなジャケットという意味です。
シャツジャケット自体は既製品などにもよく見られますし、今では誂え服でもよく見受けられます。

では、我々サルトリアイプシロンのシャツジャケットがどういった物なのか。
それは、「シャツのように軽く柔らかい仕様・仕立てでありながら、着用すると構築的・立体的なラインの出るジャケット」です。







画像はサンプルの”GIACCA CAMICIA”です。生地はサマーウールで、中身はメッシュの芯1枚、パット無し、ユキ綿無し、袖裏無しの真夏仕様です。
ボディに掛けるとそんな作りには見えませんが、裏返すと分かります。また、広げると向こうが透けて見えるくらい通気性も抜群です。

実際触って頂くと分かりますが、グニャグニャのペラペラで、本当にシャツやカーディガンのような感覚です。





しかし、着用すると、服の持っている本来のライン、胸のドレープがしっかり出ています。極柔らかい芯1枚だけのペラペラのジャケットには見えません。
この立体感は、船橋が提唱している「やじろべえ」理論の「服が首の後ろの1点に乗り、前と後ろで釣り合い」初めて生まれるものです。
この「やじろべえ」の理論と、それに伴ったフィッティングと補正のテクニックが合わさり包み込むようなストレスの無い、それはまるで身体の一部であるかのような感覚の服が完成します。
また、身体の一部になった服は脱いだ後もシワが出来ていません。

 これがサルトリアイプシロン的シャツジャケットです。普通の作りやフィッティングでは、ここまでの柔らかさを持ちつつ構築的で立体的なジャケットはなかなか出来ないと思います。

我々の通常の作りのジャケットは、前身頃には毛芯とバス芯が入り、肩パットもユキ綿も入ります。伝統的なイタリアンテーラリングを用いているので、それでも軽く柔らかい仕立てですが、この”GIACCA CAMICIA”はそのテーラリングと船橋のフィッティング技術を駆使し、物理的にも軽くした最上に軽く柔らかい仕立てです。

特にこれからの夏の季節、涼しく快適な”GIACCA CAMICIA”が最適です。
店頭にサンプルがございますので、是非1度ご覧ください。

EDWIN WOODHOUSE "Summer comfort" スーツ Distinto仕立て

初夏のような気持ちの良い日が続いております。
お仕立て上がりのご紹介です。

EDWIN WOODHOUSE "Summer comfort"スーツ(Distinto仕立て)

英国生地エドウィンウッドハウスのウール100%スーツ地で、ブルーグレー地に紫のストライプが入っております。
非常にシャリ感がありシワになりにくく、通気性抜群の生地です。
まさに夏用生地ですので、メッシュの芯1枚のみ、袖裏やパットも入れない"GIACCA CAMICIA"仕様にしております。ちなみにボタンも特注の濃紺の染め貝ボタンです。



後ろも完璧にポイントに乗っています。
また、お客様、弊社代表の船橋より御歳が上なのですが、ダンスの先生をしていらっしゃるのでとにかく姿勢と体型が素晴らしいです。
スーツをカッコよく着る上で姿勢は大事な要素ですね、、、。見習いたいと思います。





2015/04/23

Saggio #3

「Via Gallia 60」

 9月に入ると仕事や学校などが始まるので、イタリアもやっと動き出すのかと思いきや、だいたい9月末頃までだらだらとバカンスの雰囲気が続いているのに驚く。

 3か月余りのペンショーネ生活が続くと精神的にも疲れ、夜バールに行き強いウォッカを飲むようになっていた。このままではまずいと思っていた矢先、ローマで知り合った日本人の方から「シェアで借りているマンションの1室が空いた」と連絡があった。
そのマンションには3部屋あり、一人が建築の勉強で来ていた立花さん(私より3歳ほど上)、もう一人は料理の勉強に来ていた久保脇(私より2歳ほど下)という2人で、これはチャンスと思いすぐに入居のお願いをした。荷物も旅行バッグくらいだったので簡単だった。
そのマンションはサン・ジョバンニ※1、コロッセオ※2、カラカラ浴場※3、アッピア街道※4が近くにあり、ローマの城壁も一つ道を越せばあった。今でも住所を覚えている。Via Gallia 60 ※5である。


部屋の右奥に台所があり、その台所の入り口の右側に赤い白黒テレビがあった。
何の気なしにそのテレビを付けると映画が始まった。まだほとんどイタリア語の分からなかった当時だが、その映画に引き付けられ最後まで観ていた。言葉は分からないがとにかく感動を覚え、この映画の監督は一体誰で、タイトルは何かを知りたくて、エンドロールを一生懸命見ていた。

”Federico Fellini” ”La strada”

監督は「フェデリコ・フェリーニ」、作品名は「道」ということだけは分かった。
私はこの時、将来この監督の服を作りたいと深く念じたのである。

続く


※1 サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂。ローマの四大大聖堂の一つ
※2 コロッセオ。ローマ帝政期の円形闘技場。ローマを代表する観光地。当時のマンションから歩いて10分程で着く。
※3 カラカラ浴場。古代ローマの公衆浴場の一つ。ローマ帝国第22代皇帝カラカラが造営した。
現在では、夏にはオペラが上演され、当時オペラの声がマンションまで聞こえた。
※4 アッピア街道。小説「Quo Vadis クォ ヴァディス」で、使徒ペテロがローマを出ていく時に通った道。「全ての道はローマに通ず」でもおなじみ。アッピア街道の基点のサン・セバスティアーノ門も近かった。
※5 Via Gallia 60。google mapでご覧頂くと情景が浮かんで面白いです。

ローマ サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂

アッピア街道の基点 サン・セバスティアーノ門



フェデリコ・フェリーニ監督 「道」 の一場面





2015/04/17

YOSHI FUNABASHI 2015-2016メンズ&レディース秋冬コレクション

先日こちらのブログでご案内いたしました、昨日16日(木)より、19日(日)まで、YOSHI FUNABASHI 2015-2016メンズ&レディース秋冬コレクションを開催しております。

YOSHI FUNABASHI
2015-2016メンズ&レディース秋冬コレクション 

4月16日(木) - 4月19日(日) 午前10時~午後18時30分

東京都日本橋本町4-7-1イマスHKビル5F-B サルトリアイプシロン内


弊社代表船橋幸彦のお兄様の船橋芳信氏がミラノで展開しているブランドYOSHI FUNABASHIの展示会です。

ダブルフェイスの生地を使用した一枚仕立ての「軽くて暖かい」ジャケットやコートなど、素材や作りに非常にこだわりのある洋服が勢ぞろいしておりますので、是非お越しください。






2015/04/15

Saggio #2

#2 「ローマでの出会い」

 ローマに着いて早々の入院から約1週間ほどで退院したのち、ローマの洋服屋巡りを始めた。
しかし、ほとんどの洋服屋は閉まっていた。驚くことに7月20日頃から9月10日頃までは夏のバカンスだという。私も同じようにバカンスを、、、とは経済的に許されず、アルバイトを探すことにした。
運よく三越がローマで営業をしており、そこで御恩を受ける安西さんに出会う。安西さんはユニオンシューズのローマ店長として三越の靴売り場コーナーを任せられていた。ラッキーな事にバカンスの間ここでアルバイトすることが出来、その後洋服の注文も頂き公私ともに可愛がってくださった。私の洋服屋としての1番目のお客様でもある。

9月、ローマでの生活にも慣れ始め、洋服屋も営業を再開しだしたので私も洋服屋巡りを再開した。だが、なかなか教えてやるからお出でよとは誰も言ってくれず、しょうがないので、ある洋服屋のテーブルの一つをお金を払って借りて服作りを始めた。後に分かったことだが、イタリアは左翼が強い国で労働者が強く、経営者は簡単に人を雇わないのが常識だった。極端だが、労働許可証を持たない外国人がちょっと働いて解雇されても、退職金保証を要求出来てお金を取ることが出来る国なのだ。

 私がテーブルを借りた洋服屋は フランコ・カローチョロという方の洋服屋で、スペイン階段を登った教会の右の下がった通り(グレゴリアナ通り)にあった。その通りには何人かのサルトが営業をしていた。そこに二コラ・ペレグリーノ氏がいた。彼はイタリア アカデミア ディ サルティ※1の理事をやっていて、ローマの実力サルトを全て知っていた方だった。彼に出会ったおかげで、カラチェニ※2で修行でき、アカデミアでカッティングの勉強もできた。彼の顧客にクリスチャン・デ・シーカ(デ・シーカの父は名作「自転車泥棒」などで有名な映画監督)がおり、デ・シーカは現在イタリア映画界のスターである。ローマグランドホテルで彼のタキシードのフィッティングを見ることが出来たのが昨日のことのようだ。たまにイタリアに戻りテレビを見ているとデ・シーカがかっこいいジャケットを着ているのを見かける。
また、黄金のフルート奏者 セヴェリーノ・ガゼローニ※3の燕尾服やスーツ・ジャケットの仮縫いにも何回か同伴させていただいた。
イタリアのサルトは女性の服も仕立てる。服飾評論家の第一人者であるビアンカ・マリア・ピッチニーニも彼の顧客だった。彼女のジャケットの中縫いを私が作らせていただきフィッティングにも同伴させてもらった。その時の感激した思い出も今なお浮かんでくる。

 たまにアンジェロ・リトリコ※4の店へ立ち寄りいつもバールでコーヒーを御馳走してもらった。リトリコは当時世界的に有名なサルトで、カリスマだった。

ローマでの出会いは、今思い返しても素晴らしい方々との縁だったのだと思う。

ローマ スペイン広場
正面の教会の右に下る坂がグレゴリアナ通り

二コラ・ペレグリーノ氏

※1 イタリア アカデミア ディ サルティ・・・ローマの裁断学校。船橋も通った。
※2 カラチェニ・・・イタリアの有名なサルト。ここでのカラチェニはローマのトミー&ジュリオ・カラチェニ
※3 セヴェリーノ・ガゼローニ・・・イタリアのフルート奏者。
※4 アンジェロ・リトリコ・・・ローマの超大御所サルト。

2015/04/14

Saggio 船橋幸彦がイタリアで出会った人、物、事

今回より定期的に、船橋幸彦がイタリア時代に出会った様々な出来事や人、物の話を、このブログにてエッセイのような形でご紹介していきます。
1970年代後半~2009年までの30余年をイタリアで過ごし、イタリアという国で日本人洋服屋として生きてきた船橋幸彦の体験は、日本では考えられない逸話(?)もたくさんあり、このブログで少しづつではありますが紹介していければと思います。



#1 「ロンドンからローマへ」

 1976年4月、お世話になっていた中嶋さん夫妻※1と車でウェールズ・スコットランド・ネス湖と旅行に行き、1週間ほどでロンドンに戻ると、驚きの手紙が届いていた。
当時ロンドンにおいて労働許可証は当然持てず、英語学校のビザで入国しており、朝は学校、午後はジャケットを縫う事を学んでいた。
その手紙の内容はなぜか不法に仕事をしているとのことであり、仕事場の他の外国人労働者の妬みの矛先が私にきたようだ。
元々ローマに行くのが目標だったので、テムズ川のほとりを歩きながらローマが僕を呼んでいると、想いが移っていった。
 6月、パリまで飛行機で行き、パリからミラノへ、そこから又汽車でローマを目指した。道中の事はよく覚えていないが、汽車の椅子が木だったのはよく覚えている。6月のローマは既に初夏で、気候もロンドンと全く違っていた。女性の多くが芸能人のように美しく感じられた。
バルベリーニ広場近くの安いペンショーネを見つけ、とりあえず落ち着いたのだが、どうも汽車の木椅子の長旅でお尻が痛くなり、自分では見えないのでどうしたものかと思っていた、、、。
そのうち高熱も出てきて、やばいと思い救急医療に飛び込んだ。イタリア語のイの字も分からないまま手術となったが、若さゆえ不安も特に無く同期の桜を歌っていた。
結局1週間ほどの入院だったが、その間、言葉が通じずペンショーネにある日本の本が読みたくてパジャマのまま逃亡を企てたが守衛に連れ戻されたりもした。
イタリアに来て早々アクシデントに見舞われたが、無事お尻の痛みも無くなり、退院後はローマの洋服屋巡りを始めた。

続く

ローマ バルベリーニ広場


※1 船橋が故郷長崎から東京町田の羊屋という洋服屋で修行をしていた時の、羊屋の主人の息子さん夫婦。中嶋さんも英国で洋服の勉強をしていた。

2015/04/11

Dormeuil "AMADEUS365" スーツBuono仕立て

気温が上がったり下がったりと極端な季節ですね。
体調管理にお気を付けください。

お仕立て上がりのご紹介です。

Dormeuil "AMADEUS365" スーツ上下(Buono仕立て)

ドーメルの通年スーツ地AMADEUS365です。当店では非常に人気のある生地です。以前イタリアから濃紺とグレーのものをいくつか買い付けてきたもので、柄も無地やヘリンボーンなどがあります。
今回お選び頂いたものはチャコールグレーヘリンボーンで、ビジネスはもちろん、ちょっとしたフォーマル寄りの場面でも着用いただけるきれいな生地です。ネクタイも当店オリジナルの日本製50オンスドットタイです。こちらもだいぶ数が減ってきております。


2015/04/04

Harrisons of edinburgh "MYSTIQUE" スーツDistinto仕立て

新年度に入り春真っ盛りです。葉桜もきれいですね。
少し更新が空いてしまいましたが、お仕立て上がりのご紹介です。

Harrisons of edinburgh "MYSTIQUE" 8/9オンス
スーツDistinto仕立て

英国ハリソンズのMYSTIQUEという春夏スーツ地で、ドライな肌触りですが滑らかさもあり良い生地です。シワにもなりづらいのでこの季節に最適です。お仕立て頂いた生地は、ネイビーに水色ピンストと織ストライプが入ったもので、主張しすぎない柄が上品です。



当店ではすこし珍しいセンターベント。座った時の肩まわりもきれいです。

今回お仕立ていただいた生地は店頭在庫生地なのですが、MYSTIQUEの店頭在庫生地はあと2つあります。

グレンチェックとネイビーストライプの王道です。グレンチェックの方は画像では分かりにくいですが茶系です。ネイビーの方も実際は画像より暗いです。

実は当店MYSTIQUEでのお仕立ては今まであまり無かったのですが、今回お作りしてかなり良い生地でしたので皆様にもお勧めです。店頭在庫生地だと少しお安いですし、このネイビーストライプの方は廃番になっておりますのでこの在庫分が当店では最後です。

追伸
先日ブログにてお伝え致しましたNHKひるブラ出演のご案内ですが、実は当初の予定どおり4月1日に放送がありました。甲子園決勝が雨で開始時間が遅れたため、急遽放送があったようです。