2015/05/26

イタリア研究会講演を終えて

こちらのブログでもお知らせしておりました、イタリア研究会での講演に昨日行ってまいりました。

講演内容は、船橋が33年間のイタリア生活で体感してきたイタリアと日本の洋服の違い(作り、型紙などの専門的な部分から、文化的背景や感性の違いなど)を第1部として、その第1部での体感、経験を経て確立した「やじろべえ」についての話と実践を第2部という構成で行いました。
沢山の方にお越しいただき、誠に有り難うございました。

今回の講演では、イタリアと日本の洋服の型紙の違いというのをテキストにまとめてお見せいたしました。

また、船橋が提唱している理論「やじろべえ」の概要を、船橋の体型画像とその体型に対しての型紙を例としてテキストにして皆様にお見せいたしました。
実際に配布しました体型画像のテキストです。型紙の画像はこちらには載せられませんが、ここまで体型の癖がありますと左右で大きく型紙が変わります。そして、こちらを踏まえて実際に着用している服を見て頂きました。
上の体型画像のような歪みがあるようには見えません。






よく販売店などで耳にする、「体型に合わすと歪みが見えてかっこ悪い」という認識は間違いで、きちんと体型に合わせられ「やじろべえ」のポイントに乗った服は、縦糸と横糸が釣り合うので本来の服のラインが出て、歪んで見えずかっこよく着やすい。これが洋服の本質であると船橋は言います。
ちなみに、このジャケットはメッシュの芯1枚でパットや袖裏も無いGIACCA CAMICIA仕様です。

そして、この説明を踏まえ、会場の方お一人に協力していただき、ゲージを使った仮縫いフィッティングのデモンストレーションも行いました。
この仮縫いデモンストレーションは当店でも体感していただけますので、もしご興味のある方はご連絡下さいませ。

初めは皆様「やじろべえ」と聞いてピンときていませんでしたが、一通り説明を終え、実際に目の当りにされましたらご納得いただけたようでした。
2時間はあっという間で、かなり内容の濃い時間でした!
また、イタリア研究会では、イタリアに造詣が深い方々が毎月講演をしておりますのでご興味のある方は一度行ってみてはいかがでしょうか。


サルトリアイプシロンでは船橋幸彦による講演のご依頼を随時承っております。
船橋による洋服の話や仕立ての話、独自の洋服理論「やじろべえ」の話やイタリア生活の話など、
1976年から2009年までイタリアで33年間サルトとして生きてきた船橋の話は内容が濃く、洋服が身近でない方たちでも楽しんでいただけると思います。
ご依頼の方はメールかお電話にてご連絡下さいませ。
sartoriaypsilon@adagio.ocn.ne.jp
TEL:03-6225-2257

2015/05/24

25日(月)の営業時間変更のお知らせ

久々の更新です。。。

明日25日(月)の営業時間ですが、OPEN10時 CLOSE17時となります。

先日もお知らせいたしましたが、明日25日(月)19時から、上野の東京文化会館にて船橋による「イタリアと日本の服の違い」と題した講演を行います。

長崎の洋服屋の家に生まれ、1976年から33年間イタリアで本場の洋服を体感してきた船橋による、イタリアと日本の服の違いとたどり着いた服の本質の話をご披露致します。

一般の方のご参加も可能ですので、お時間のある方は是非お越し下さいませ。

講演会のお知らせ

2015/05/13

「やじろべえ」体験 遠山周平氏

先日、服飾評論家の遠山周平先生が、船橋が提唱するフィッティング理論「やじろべえ」の体験にいらして下さいました。

遠山先生と船橋は、船橋がローマでサルトをやっていた時からのお付き合いです。また、遠山先生がMen's Ex 1997年1月号に執筆いたしました「はじめてのサルトリア・イタリアーナ」という記事で、ミラノ時代の船橋にオーダーした服の感想や、他のイタリアのサルトと船橋の舌戦?!の内容などが載っています。こちらの記事はイプシロンのホームページのPressページの一番下に掲載しておりますので、是非ご覧ください。→サルトリアイプシロンホームページ

では、18年前、「完璧なフィッティング」と評してくださった船橋のフィッティングが、どのように進化したかを体感していただきます。
ゲージを使用します。まずはそのまま着た状態です。



前は割と綺麗ですが、背中はやはり遠山先生の体型に合っていない部分が顕著に見て取れます。

ここから補正をします。

肩を外し、前後のバランスと角度が合うように調整致します。


補正完了です。
補正前と比べると背中、特に肩周りが変わっております。

この前後のバランスが取れて初めて服のラインが出てきますので、ウエストを絞る等のシルエットの調整は最後にしないと意味がありません。


座っても肩に乗っています。
バランスが合っているとボタンを外す必要がありません。
ばっちり「やじろべえ」になっております。

通常の御注文の際も、まず初めにゲージでのフィッティングを行い、その補正内容を反映させた型紙で最初の仮縫いをいたしますので、初めから高い精度で仮縫いが行えます。

体感した遠山先生は「肩を少しいじっただけなのに全然違う」と驚いておりました。

さらに、今回「やじろべえ」体験をしていただいた感想コメントを頂きました。

「約20年前にぼくが『世界中の仕立て屋を巡る』という取材を始めたときに、ローマでサルトリア・イプシロンを見に行ったのが船橋幸彦さんとの出会いです。ユキさんは、ずば抜けた才能をもつ若手テーラーでした。技術的なアイデアも素晴らしかったし、服作りの哲学もブレのない軸がありました。当時から「着る人それぞれの体型に合ったバランスのよい服は何物にも代え難いスタイルになる」という思想を持っていた。最近特許を取得した『やじろべえ』は、それを長い歳月と努力の末に理論づけたものなのだな、と感心しています。
今回そのフィッティングの体験をして感じたのは、経験と勘に頼った昔の仮縫いなどに比べて、よりシンプルでシステマチェックに進化していること。また補正後の姿を画像でわかりやすく伝えてくれるから素人のお客様でも安心納得でオーダーができると思います。『やじろべえ』は、単に服をカラダに合わせるというのでなく、体型の長短を吟味してバランスをとりながらフィッティングするため、着やすく美しい服ができる。完成した服のパターン(設計図)は、着る人の個性を反映したものなので、ぼくのようにさまざまなデザインを楽しみたい浮気症でも(笑)、それが通奏低音のようなスタイルとなって品位を保ってくれる。
 心地の良い刺激を受けることが少なくなった最近のメンズファッションにおいて、『やじろべえ』は素晴らしくゴキゲンな体験でした。」

遠山先生、コメント有り難うございます!

また、今回ご来店された際に、船橋と遠山先生の共通のお知り合いで、着道楽や食道楽として名を馳せた古波藏保好氏(Wiki)の写真も持ってきてくださり、生前の古波蔵先生の逸話もお聞きすることが出来ました。
船橋と古波藏先生との話もいくつかあり、そちらは船橋のブログ内エッセイSaggioの方で近々掲載したいと思います。

2015/05/11

講演会のお知らせ

初夏の陽気爽やかですね。

本日は弊社代表船橋の講演会についてお知らせです。

・日時 5月25日(月) 19時~21時

・場所 東京文化会館4階 大会議室 map

・講師 船橋幸彦

・演題 イタリアと日本の服の違い


この講演会は、船橋が在籍しておりますイタリア研究会での講演会です。
一般の方も参加費用2000円で参加可能ですので、お時間のある方は是非ご参加下さいませ。


イタリア研究会について→こちら

講演会詳細→こちら


2015/05/06

DRAPERS"LOLLI SUGGESTIONS" jacket & HOLLAND SHERRY"SummerVariety"pants Distinto仕立て

ゴールデンウイークはほぼ晴れて行楽日和でしたが如何お過ごしでしょうか。
お仕立て上がりのご紹介です。

DRAPERS"LOLLI SUGGESTIONS" SILK&CASHMERE jacket
HOLLAND&SHERRY"SummerVariety"pants

イタリア高級服地のドラッパーズの中でも、社長のローリ氏が色柄や素材を厳選したスペシャルな生地「LOLLI SUGGESTIONS」のシルクカシミアのジャケットと、ホーランドシェリーの夏生地"SummerVariety"のライトグレーのパンツです。



ジャケットは芯1枚のみのGIACCA CAMICIA仕様です。生地も仕立てもかなり柔らかいのですが、きっちりとラインが出ています。
このジャケットのグラデーションの色味とパンツのライトグレーの組み合わせが絶妙です。
N様、スーツもご期待下さいませ!

(お知らせ)
サルトリアイプシロン インスタグラム始めました。皆様宜しければフォローお願い致します。

2015/05/01

Saggio #4

「Si va bene」

 ローマに来てアパートの部屋も見つかり、生活も落ち着いて何年かした時、同居人の2人が日本に帰るというので、1人でここを借り1部屋を仕事場にすることにした。

1980年、滞在許可の問題もあり、個人会社「yuki」を設立した。しかし注文を取りながらアパートの1室で洋服屋をやることは経済的にも大変無理があり、アルバイトの一環として映画のエキストラもやりながらの生活をしていた。そんな生活をしていたある日、あのフェデリコ・フェリーニが新作映画の役者のオーディションをするという情報が入った。
「チャンス、やっと会える」
直ぐに頭に浮かんだ。
実は当時、ギャラが高い事もありエキストラだけでなく役者としても登録しており、その縁でオーディションを受けられることになった。(フェリーニの映画はアジア系やアラブ系の人も割と使われることがあり、そこも運が良かったかもしれない)
ローマには有名な映画の撮影所「Cine Citta」※1があり、その中のフェリーニの事務所でやるとのことだった。
オーディション前日、自分の番が来たらなんと話をしようかと文章を考え、何度も何度も言葉を繰り返していた。
 当日、会場に着くと既に10人くらい並んでおり、ドキドキが止まらなかった。これは役者のオーディションだと怒られるかなど、色々と想像が巡る、、、、。

「Funabashi」と呼ばれた。
ドアを開けて入ると目の前にあのフェデリコ・フェリーニがどんと座っていた!

「初めまして、船橋幸彦と申します。実は今日は役者のオーディションで来たのではありません。私は日本から勉強に来たサルトです。ローマに来て間もないころ、あなたの映画”道”を観てイタリア語の全然分からない私が感動しました。それは何とも説明しがたい特別な思いで、自然にいつしかあなたに服を作りたいと念じていました。あなたの服を作らせてください。」

何とか自分の思いを告げた。
すこしの時間が流れ、、、、

『Si va bene』※2

フェリーニは答えた。

私は安堵と喜びの感情のままその日は帰り、後日事務所に採寸に行った。生地は私が選んだ。上着はチェックのシルク100%、パンツは白無地の麻100%の生地だ。「アルビテル」※3の生地だったと思う。
その後仮縫い、中縫いとスムーズ※4に進み、無事にジャケットとパンツを収めることが出来た。
最後服を収めたときに、フェリーニの本にサインをもらった。そこには
『a yuki con auguri buona fortuna. con abito il grande sarto yuki』
「ユキ、幸運を願う。偉大なサルト、ユキが作ったスーツ(→で直筆の本人の絵)」
と書いてあった。

この本は、今も私の大切な宝物である。


仮縫いの場面

出来上がりを収めた時

サインと作った服を着た本人を直筆で描いてくれた


※1 Cine Citta・・・チネチッタ。イタリア最大の映画撮影所。ローマにあり、フェリーニの事務所もその中にあった。
※2 Si va bene・・・「OK,わかったよ」という意味。
※3 アルビテル・・・今は無い生地のブランドで、イタリア・カルネ社が扱っていた。(カルネ社は今もあり、デルフィノなどの生地を扱っている)当時イタリアのサルトでよく出回っていた。
※4 仮縫い・中縫いなどスムーズには進んだが、いつも同じ雰囲気ではなかった思い出。世界的な監督はやはり独特であった。